「月利10%を複利で回せば、100万円が1年で約314万円になる」。こういう計算を一度はやったことがあると思います。僕もFXを始めたばかりの頃、電卓を叩いて夢をふくらませていました。
でも、はっきり言います。複利のシミュレーションにワクワクしている時点で、たいてい勝てていません。僕自身、その計算どおりにロットを上げていって、連敗で資金を溶かして退場した経験があります。
僕はFXを12年やってきて、11年連続で年間収支をプラスで終えています。その僕がどう考えて口座を増やしてきたかというと、「相場から複利で増やす」のではなく、「毎月の入金+相場の利益」で増やすやり方でした。この記事では、複利と単利の違いから、その考え方までをお話しします。
先に結論をまとめておきます。勝ちが安定するまでは単利(ロット固定)。複利に切り替えるのは、月ベースのプラスが半年〜1年続いてから。複利は「勝てる人が増やすスピードを上げる道具」であって、「勝てない人が勝てるようになる道具」ではありません。ここを逆に考えている人がとても多いです。
- 複利と単利は、FXでは何が違うのか
- 複利シミュレーションの「理想」と「現実」
- 複利に切り替えていい3つの条件
- 僕自身の口座の増やし方
FXでの「複利」と「単利」の違い

FXでの複利と単利は、「ロット(取引する枚数)を、増えた資金に合わせて上げていくかどうか」の違いです。
- 単利:ロットを固定する。資金が120万円に増えても、100万円のときと同じ枚数で取引する。1回の負け額はずっと一定
- 複利:利益も乗せてロットを上げる。資金が増えるほど、1回で動く金額(勝ち額も負け額も)が大きくなる
数字だけ見れば、複利のほうが増えるスピードは速いです。でも、大事なのは「勝ち続けられれば」という前提がついていることです。連敗が来たとき、複利は減るスピードも同じだけ速い。ここが見落とされがちなポイントです。
複利シミュレーションの「理想」と「現実」

複利シミュレーションは、「毎月かならず同じ%のプラスで終わる」という、現実にはありえない前提で計算されています。実際の相場では、大きく勝てる月もあれば、マイナスの月もあります。
そして人間の心理として、資金が増えた直後にロットを上げたくなります。「増えたぶんも運用しないともったいない」と感じるからです。ところが、そのタイミングで連敗が来ると、上げたロットのぶんだけ大きく減り、あっという間に元の資金を割り込みます。
僕が退場したときも、まさにこれでした。3か月ほど調子が良かったので「これはいける」とロットを一気に上げ、次の月の連敗で、それまでの利益と元金の一部までまとめて失いました。複利は、勝ちが安定していない人がやると「負けの拡大装置」になります。
複利シミュレーションが計算に入れていない3つのこと
ネットでよく見る「◯年で資産◯倍」の表は、都合のいい前提でできています。少なくとも次の3つが抜けています。
① ドローダウン(一時的な資金の落ち込み)。実際のトレードでは、勝てる手法でも数連敗はふつうに起きます。資金が2割・3割減る局面を、シミュレーションは想定していません。この局面でロットを上げていると、立て直しがきかなくなります。
② 毎月きっちり同じ%勝てるという仮定。相場には、大きく動く月とほとんど動かない月があります。「今月は+15%、来月は−3%、その次は+8%」のように、実際はデコボコです。平均すればプラスでも、複利は「マイナスの月」でロットが大きいと深く削られます。
③ コストと税金。スプレッド、スワップ、想定より不利な価格で約定するスリッページ、そして利益が出れば税金もかかります。これらは毎回のリターンをじわじわ削るので、理論値どおりには増えません。
つまり、複利シミュレーションの右肩上がりの曲線は「うまくいけば」の上限であって、目標にする数字ではありません。
初心者は、まず単利(ロット固定)でいい
結論から言うと、勝ちが安定するまでは単利(ロット固定)をおすすめします。理由は3つあります。
① 1回の負け額が一定なので、判断がぶれない。「今日は負けても2万円まで」と分かっていれば、損切りに迷いが出ません。
② 連敗しても淡々と続けられる。複利だと、連敗のたびに「次のロットをどうするか」で悩みます。単利ならその悩みがゼロです。
③ 自分の手法の実力が見える。ロットが一定だから、月ごとの損益(pips)を比べれば、手法が機能しているかどうかが素直に分かります。リスクリワード比の考え方や勝率を検証するときも、単利のほうがデータを読みやすいです。
複利に切り替えていい3つの条件

複利がダメというわけではありません。タイミングの問題です。次の3つがそろってから切り替えます。
- 手法に再現性がある。同じ条件で入って、月単位で結果がそろっている。1回1回の勝ち負けではなく、月の平均で安定していること
- 直近の半年〜1年、月ベースで負けていない。1〜2か月では足りません。相場つきの違う季節をまたいで、月ごとにプラスで終えられていること
- 金額が増えても、同じ判断ができる。1回の損失額が2万円から4万円になっても、いつもどおり損切りボタンを押せること
この3つがそろったら、いきなり倍にするのではなく、資金が2〜3割増えたらロットを1段上げるくらいのゆっくりしたペースで上げていきます。
複利にしたら「減らし方」もセットで決める
複利で大事なのは、上げるルールよりも下げるルールです。増えたらロットを上げるのに、減ってもロットを下げない人は、必ずどこかで大きくやられます。
おすすめは、次のようにシンプルに決めることです。
- 資金がピークから10%減ったら、ロットを1段下げる。
- さらに減って20%まで来たら、もう1段下げる。
- ピークを更新したら、また1段ずつ戻す。
こうすると、調子がいいときは自然にロットが大きく、崩れ始めたら自然にロットが小さくなります。「勝っているときに攻めて、負けているときは守る」が、感情ではなくルールで回るようになります。増やす側だけを複利にして、減らす側を放置するのがいちばん危ないパターンです。
「負けている側」を止める仕組みは、1日単位でも作っておくと安心です。FX「1日の損失上限」の決め方もあわせてどうぞ。
僕自身の口座の増やし方

僕が専業になる前、口座を増やしていた方法はシンプルです。毎月の収入から決めた額を入金し続けて、相場の利益はロット固定でコツコツ積む。この2つだけでした。
「相場だけで複利で増やそう」とすると、どうしても一発を狙うトレードになります。入金をやめて、口座の中のお金だけをぐるぐる回そうとするからです。そうではなく、増える土台は毎月の入金で作り、相場では「負けない」ことを優先する。相場からの複利は、勝ちが安定してからのボーナスだと考えていました。
この考え方は、FXで9割の人が勝てない理由にも通じます。「10万円を複利で1000万円にする」という発想から抜けて、「毎月の入金を続けられる環境を先に作る」ほうに頭を切り替えた人から、成績が安定していきます。
順番としては、こういうイメージです。
- 最初の1年:毎月入金しながら、単利で「負けない立ち回り」を身につける。口座が増えるのは主に入金のおかげでOK
- 2年目あたり:月ベースでプラスが続くようになったら、入金は続けたまま、相場の利益ぶんを少しずつロットに乗せ始める
- 勝ちが安定してから:入金を減らして、相場からの複利をメインにしていく
いきなり3番目をやろうとするのが、いちばんよくある失敗です。土台がないうちに複利で回すと、増えるより先に「大きく減る経験」をして、メンタルが折れてしまいます。
「複利で早く増やしたい」と焦るときほど危ない
複利のシミュレーションを何度も計算してしまうときは、たいてい「今の資金では物足りない」「早く結果がほしい」という気持ちが強くなっています。
その状態だと、本来なら見送る場所でエントリーしたり、決めていた損切りをずらしたりしがちです。1トレードの損失は資金の何%かで書いたルール(1回の損失を資金の1〜2%に固定する)も、「早く増やしたい」気持ちの前ではあっさり破られます。
だから僕は、複利の計算をしたくなったら、逆に「今月は入金と単利だけ」と決めることにしています。増やすスピードを上げるのは、成績が安定という「事実」で確認できてからで十分です。焦りは、たいていコストにしかなりません。
Mr.Kが「増やすスピード」について話した動画
下の動画では、「プロトレーダーでも、渡された100万円をすぐ200万・400万にはできない。1か月で3万円増えれば上等」という話をしています。複利シミュレーションのイメージとの差を知るのに、ちょうどいい内容です。
よくある質問
少額(5万円・10万円)から始める場合も、単利のほうがいいですか?
はい。少額ほど、1回の負けで資金に対する割合が大きくなりがちです。まずはロットを固定して、負けない立ち回りを身につけるのが先です。資金が小さいうちは「増やす」より「退場しない」を目標にしてください。
複利にしないと、いつまでも資金が増えないのでは?
勝てる手法が固まる前に複利で増やそうとすると、増える前に退場します。まずは単利で「月ベースでプラス」を半年〜1年続けること。その実績があれば、あとから複利に切り替えても十分に増やせます。順番の問題です。
「2〜3割増えたらロットを1段上げる」の「1段」はどのくらいですか?
目安は、1回のリスク額が資金に対して同じ割合(1〜2%)に収まる範囲です。資金が100万円→130万円になったら、2万円だったリスクを2.6万円くらいに。急に倍にはしません。
スワップポイント狙いの長期運用でも同じ考え方ですか?
基本は同じで、増えた含み益をあてにしてポジションを追加していくと、逆行したときに一気に耐えられなくなります。長期でも「入金でロットを増やす、含み益では増やさない」を守ると安全です。
単利だと、いつロットを上げていいのか分からなくなりませんか?
「資金が◯%増えたら1段上げる/◯%減ったら1段下げる」と、数字で先に決めておけば迷いません。感覚で「そろそろ上げてもいいかな」と判断するのがいちばん危険です。上げ幅は、1回のリスク額が資金に対して同じ割合に収まる範囲にします。
複利で失敗したあと、また単利に戻していいですか?
もちろんです。というより、戻すべきです。複利で崩れたのは「まだそのタイミングではなかった」というだけのこと。ロットを戻して、月ベースのプラスをもう一度積み直せば、次に複利へ移るときはもっとうまくいきます。
まとめ
- FXの複利=増えた資金に合わせてロットを上げること。単利=ロットを固定すること
- 複利シミュレーションは「毎月同じ%で勝てる」前提。現実にはありえない
- 勝ちが安定する前の複利は「負けの拡大装置」になる
- 初心者は単利(ロット固定)でいい。判断がぶれず、手法の実力も見える
- 複利に切り替える条件は「再現性・半年〜1年の月ベースのプラス・金額が増えても同じ判断」
- 僕は「毎月の入金+ロット固定の利益」で口座を育てた。相場からの複利は後半のボーナス
複利の計算にワクワクしたときこそ、いったん立ち止まってください。まずは単利で、月ベースのプラスを積み上げること。増やすスピードを上げるのは、そのあとで十分間に合います。
この記事は、FXの資金管理のやり方(全体像)の一部です。資金管理を最初から順番に読むなら、まずそちらをどうぞ。FX初心者ロードマップの「資金管理」パートにあたる内容です。あわせて1トレードの損失は資金の何%か、リスクリワード比の考え方もどうぞ。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、投資の勧誘や利益を保証するものではありません。取引はご自身の判断と責任でお願いします。


