「リスクリワード比(リスクリワードレシオ)」という言葉、聞いたことはあっても、実際のトレードで意識できている人は少ないです。多くの方は、そこよりも「勝率」を気にしています。
僕はFXを12年やってきて、11年連続で年間収支をプラスで終えています。特別な才能があったわけではなく、最初の半年〜1年は手法を探してさまよっていました。ただ、あるとき「勝率を上げること」より「1回の負けと1回の勝ちの大きさをそろえること」に意識を向けてから、成績が安定していきました。
いまでも、エントリーする前に必ず「取れて何pips、負けて何pips」を口に出して確認します。この比率が悪いトレードは、どれだけ勝てそうに見えても見送ります。この記事では、その考え方をお話しします。
- リスクリワード比とは何か、どう計算するか
- なぜ「勝率」より先にこの数字を見るのか
- 「損小利大」が続かない3つの理由と直し方
- エントリー前にリスクリワード比を決める手順
リスクリワード比とは「負け幅と勝ち幅の比率」

リスクリワード比とは、「損切りまでの距離(リスク)」と「利確目標までの距離(リワード)」の比率のことです。リワードをリスクで割った数字で表します。
たとえば、エントリーしてから損切りまでが10pips、利確目標までが20pipsなら、リスクリワード比は「20 ÷ 10 = 2.0」、つまり1:2です。1回負けると10pips失いますが、1回勝つと20pips取れる形になっています。
pipsでも金額でも、どちらで計算しても同じです。大事なのは絶対額ではなく比率で、「この形なら、負けた分をどのくらいで取り返せるのか」を数字にしておくことです。
リスクリワードの計算方法(pipsと金額の計算例)
計算式はシンプルです。リスクリワード比 = 利確までの幅 ÷ 損切りまでの幅。pipsで計算しても、金額で計算しても、答えは同じになります。
- pipsで計算……損切りまで15pips、利確まで30pipsなら「30 ÷ 15 = 2.0」で、1:2です
- 金額で計算……ドル円を1万通貨で持つと1pipsは約100円。損切り15pipsで約1,500円、利確30pipsで約3,000円なので「3,000 ÷ 1,500 = 2.0」。同じく1:2です
リスクリワード比と「トントンになる勝率」の早見表
リスクリワード比が決まると、何%勝てば損も得もしないか(損益分岐の勝率)が計算できます。式は「1 ÷(1 + リスクリワード比)」です。
| リスクリワード比 | 損益分岐の勝率 | 意味 |
|---|---|---|
| 1:0.5 | 約67% | 3回に2回以上勝たないとマイナス |
| 1:1 | 50% | 2回に1回勝ってトントン |
| 1:1.5 | 40% | 5回に2回勝てばトントン |
| 1:2 | 約33% | 3回に1回勝てばトントン |
| 1:3 | 25% | 4回に1回勝てばトントン |
この勝率を上回れば、スプレッドなどのコストを除けば理論上はプラスになります。大事なのは表の数字を覚えることではなく、自分のリスクリワード比と実際の勝率を、記録から出して見比べることです。勝率とのバランスの取り方は勝率とリスクリワードのバランスでくわしく書いています。
なぜ「勝率」より先にリスクリワード比を見るのか

多くの人は「勝率を上げたい」と考えます。でも、勝率100%は絶対に無理ですし、勝率を5%上げるのはとても難しいことです。
一方、リスクリワード比が決まると、「損益分岐の勝率(トントンになる勝率)」が自動的に決まります。
- 1:1 なら、勝率50%でトントン
- 1:1.5 なら、勝率40%でトントン
- 1:2 なら、勝率約33%でトントン
- 1:3 なら、勝率25%でトントン
つまり、リスクリワード比が1:2の形で戦えているなら、3回に1回勝てば負けないということです。勝率を上げるのは大変ですが、「利確目標を少し伸ばす」「損切りを構造の外に置く」だけでリスクリワード比は変えられます。だから僕は、まずリスクリワード、そのあと勝率の順番で見ています。
「損小利大」が逆になる3つの理由

「損小利大(損は小さく、利益は大きく)」が理想だと分かっていても、実際は逆になっている人がとても多いです。理由は3つあります。
① 利確が早い。含み益が出ると「減るのが怖い」と感じて、目標の手前で利確してしまう。これでリワードが小さくなります。
② 損切りが遅い、または動かす。含み損を認めたくなくて、決めていた損切りを先にずらす。「もう少し待てば戻るはず」で、リスクだけが大きくなります。
③ そもそも値幅の取れない場所で入っている。これが見落とされがちです。上げの天井付近で買う、次の水平線の直前で買う。こうすると、入った時点でリワードがほとんど残っていません。どんなに利確や損切りをうまくやっても、リスクリワード比は良くなりません。この「勝ちにくい場所で入ってしまう」問題はFXで9割の人が勝てない理由でも取り上げています。
リスクリワード比は「入る前」に決まっている

リスクリワード比は、エントリーしたあとに決めるものではありません。入る前に、この順番で確認します。
- 損切りを「否定ポイント」に置く。「ここまで来たら、このトレードの前提が崩れる」というチャート上の場所です。直近安値の少し下、水平線の外側など。ここまでの距離が「リスク」になります
- 次に意識される水平線・高値安値までの距離を測る。価格が素直に伸びたとして、最初にぶつかる壁までがどのくらいか。これが「リワードの目安」です
- リワード ÷ リスク を計算する。この数字が1.5未満なら、どれだけチャートの形が良く見えても見送ります
「入ってから利確目標を探す」と、たいてい欲張った目標を置いてしまい、届かずに戻される、を繰り返します。入る前に「この場所は割に合うか」を数字で見る。それだけで、勝ちにくい場所での無理なエントリーが減ります。
どのくらいの比率を狙えばいいか
デイトレードなら、1:1.5〜1:2 をベースにするのがおすすめです。
- 1:1未満は原則見送り。負けと勝ちが同じか、負けのほうが大きい形は、よほど勝率が高くないと続きません
- 「1:3以上だけ狙う」は理想だが、初心者には難しい。条件が厳しすぎて待ちきれず、結局リスクリワードの悪いトレードに手を出す人が多いです。まずは1:1.5を確実に取ることから
- 勝率とセットで考える。1:1.5で勝率45%あれば、しっかりプラスになります。派手さはありませんが、これで十分です。勝率とのバランスの取り方は勝率とリスクリワードのバランスで詳しくまとめています
リスクリワード比を上げる4つの工夫
「勝ちやすい場所で、割に合う形をつくる」ための具体的な工夫です。
① 損切りを構造の外に置く。ノイズ(方向感を変えない範囲のブレ)の中に損切りを置くと、読みは合っているのに狩られます。損切りは構造の外まで下げて、広がった分はロット(枚数)で調整します。1回のリスク額を具体的にいくらにするかは1トレードの損失は資金の何%かにまとめました。
② エントリーを引きつける。伸びているローソク足に飛び乗ると、リワードが小さく、リスクが大きくなります。押し目・戻りを待って、反発を確認してから入ると、同じトレードでもリスクリワード比が大きく改善します。
③ 利確を「次の壁の少し手前」に置く。欲張って壁の向こうを狙うと届きません。次に意識される水平線の手前で確実に取る。届く目標に変えるだけで、実際の勝率が上がります。
④ 分割決済を使う。「利確が早い」クセが直らないなら、ポジションの半分を1:1で利確して、残り半分を伸ばす。心理的に楽になり、平均のリスクリワード比も保てます。
リスクリワードを計算できるツール
毎回電卓で計算しなくても、チャート上で比率を出してくれる道具があります。
- TradingView の「ロングポジション」「ショートポジション」:エントリー・損切り・利確の3か所をドラッグするだけで、リスクリワードの比率と値幅が表示されます。無料プランでも使えます
- FX会社の取引ツール:注文画面で損切りと利確を置くと、想定される損益を金額で表示してくれるものがあります
- MT4・MT5:標準ではリスクリワードの表示はありませんが、注文ラインを引けば値幅(pips)は分かるので、本文の計算式で出せます
どの道具を使っても、大事なのは「入る前に比率を見る」ことです。入ったあとに見ても、もう遅いからです。
僕が実際にやっている「事前メモ」
僕はエントリーの前に、頭の中で3行のメモをつくります。
- 方向:4時間足は上か下か横か
- 損切り:どの構造の外に置くか(=何pips)
- 利確目標:次に意識される水平線はどこか(=何pips)
そのうえで「リワード ÷ リスク」を計算して、1.5未満なら、そのトレードは消します。これを50回も続けると、「自分がリスクリワードの悪い場所で入りがちなパターン」が見えてきます。僕の場合は「上げが続いたあとの高値づかみ」でした。
下の動画では、「10回勝っても30pipsしか取れないのに、1回で20pips負ける」という、まさにリスクリワードが崩れている状態について話しています。
よくある質問
リスクリワード比が良ければ、勝率は低くても大丈夫ですか?
損益分岐の勝率を割らなければ、計算上はプラスになります。ただし勝率20%台だと連敗が続きやすく、メンタルが持たない人が多いです。現実的には「1:2・勝率35〜45%くらい」を目安にすると、続けやすいと思います。連敗に口座が耐えられるかは破産確率の考え方もあわせて確認してください。
利確目標まで届かず、戻されることが多いです
目標が遠すぎる可能性が高いです。「次に意識される水平線の手前」まで目標を近づけてください。それでも早く利確したくなるなら、分割決済で半分だけ先に取るのがおすすめです。
損切り幅を狭くすれば、リスクリワード比は良くなりますよね?
数字の上ではそうですが、実際にはノイズで狩られる回数が増えて、勝率が大きく下がります。トータルではかえって悪くなることが多いです。損切りは構造で決めて、幅はロットで調整してください。
スキャルピングでもリスクリワード比は必要ですか?
必要です。1:1を切る形で戦うなら、その分かなり高い勝率(70%以上)と、素早い実行力が要ります。初心者のうちは、まず1:1.5以上を取れる場所に絞ることをおすすめします。
リスクリワードは「1:3が理想」と聞きました。目指したほうがいいですか?
1:3は数字としては理想ですが、条件が厳しいぶん、待ちきれずに悪い形で入ってしまう人が多いです。まずは1:1.5〜1:2を確実に取れるようにして、上の早見表の勝率を超えられているかを記録で確認するほうが、成績は安定します。
リスクリワードは意味がないって本当ですか?
比率だけを見て勝率を無視すると、意味がないように感じることはあります。たとえば利確を遠くに置きすぎて、ほとんど届かなければ比率がよくても負けが続きます。リスクリワードは勝率とセットで見て初めて意味が出る数字です。この記事の早見表のように、「この比率なら勝率何%でトントンか」を知っておくと、自分のトレードが続けて大丈夫なものかを判断できます。
まとめ
- リスクリワード比=「損切りまでの距離」と「利確目標までの距離」の比率(リワード ÷ リスク)
- 比率が決まると「トントンの勝率」が決まる。1:2なら勝率33%で負けない
- 損小利大が逆になる理由は「利確が早い・損切りが遅い・値幅の取れない場所で入る」
- リスクリワード比は入る前に決める(損切り→利確目標→割り算の順)
- デイトレは1:1.5〜1:2をベースに。1:1未満は原則見送り
- 損切りは構造の外へ、幅はロットで調整。エントリーは引きつける
勝率を上げようと頑張る前に、「1回の勝ちと1回の負けの大きさ」をそろえる。地味ですが、これが11年やってきていちばん効いた考え方でした。まずは事前メモの3行から、試してみてください。
この記事は、FXの資金管理のやり方(全体像)の一部です。資金管理を最初から順番に読むなら、まずそちらをどうぞ。FX初心者ロードマップの「資金管理」パートにあたる内容です。あわせて1トレードの損失は資金の何%か、損切り貧乏から抜け出す5つのステップもどうぞ。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、投資の勧誘や利益を保証するものではありません。取引はご自身の判断と責任でお願いします。


