「勝率90%の手法」と聞くと、すごく良さそうに感じます。でも、勝率だけを見て手法を選ぶと、たいてい痛い目にあいます。勝率が高くても、1回の負けが勝ち10回ぶんなら、トータルではマイナスだからです。
僕はFXを12年やってきて、11年連続で年間収支をプラスで終えています。勝てるようになる前は、「勝率を上げること」ばかり考えていました。利益が乗ったらすぐ利確して、勝ちトレードの数を増やす。勝率は7割を超えていました。それなのに、月末にはいつも資金が減っていたんです。
原因は、勝率とリスクリワードのバランスが崩れていたことでした。この記事では、その2つをどうやってセットで見るのか、そして僕が今どちらを固定してどちらを追っているのかをお話しします。
- 勝率とリスクリワードは「期待値」でセットになる
- リスクリワード別の「損益分岐の勝率」の出し方
- 勝率とリスクリワードはトレードオフになりやすい
- 僕は「勝率5割」を固定して、リスクリワードだけを追っている
勝率とリスクリワードは「期待値」でひとつになる

勝率とリスクリワードは、どちらか片方では意味を持ちません。2つがそろって、はじめて「そのトレードが増えるものか、減るものか」が決まります。それを1本の式にしたのが期待値です。
1トレードの期待値 =(勝率 × 平均利益)−(負け率 × 平均損失)
たとえば、勝率40%、平均利益2万円、平均損失1万円のトレードなら、
0.4 × 2万円 - 0.6 × 1万円 = +0.2万円
1回あたり平均で2,000円のプラス。勝率は4割しかありませんが、勝ったときの利益が負けたときの損失より大きいので、続ければ資金は増えていきます。
逆に、勝率70%でも平均利益5,000円・平均損失2万円なら、
0.7 × 0.5万円 - 0.3 × 2万円 = +0.35万円 - 0.6万円 = -0.25万円
1回あたり平均2,500円のマイナス。勝率は高いのに、負けるたびに勝ち4回ぶんを失うので、トータルでは減っていきます。勝率の高さは、リスクリワードの悪さでかんたんに打ち消されるということです。
リスクリワード別「損益分岐の勝率」を覚えておく

自分のトレードが「増える側」か「減る側」かを、ざっくり判断する目安があります。損益分岐の勝率です。計算式はシンプルで、
損益分岐の勝率 = 1 ÷(1 + リスクリワード)
これで出た勝率を実際の勝率が上回っていれば、トータルでプラスです。よく使う数字を並べておきます。
- リスクリワード1対0.5(勝ち0.5・負け1)→ 必要勝率約67%
- リスクリワード1対1 → 必要勝率50%
- リスクリワード1対1.5 → 必要勝率40%
- リスクリワード1対2 → 必要勝率約33%
- リスクリワード1対3 → 必要勝率25%
ここで分かるのは、勝ちを大きくするほど、必要な勝率はどんどん下がるということです。リスクリワード1対0.5だと勝率67%も必要で、これはかなりきびしい。でも1対2まで持っていければ、勝率33%、つまり3回に1回勝てば十分になります。
リスクリワードそのものの決め方はリスクリワード比の考え方にまとめています。あわせて読むと、この表の意味がはっきりします。
勝率とリスクリワードは「トレードオフ」になりやすい

「じゃあ勝率もリスクリワードも両方上げればいい」と思うかもしれません。でも実際には、この2つは片方を上げると、もう片方が下がりやすい関係にあります。
いちばん分かりやすいのが、利確の位置です。
- 利確を近くに置く:すぐ届くので勝率は上がる。でも1回の利益が小さいので、リスクリワードは下がる
- 利確を遠くに置く:届かずに引き返されることが増えて勝率は下がる。でも届いたときの利益は大きいので、リスクリワードは上がる
損切りの位置も同じです。損切りを広く取れば、ちょっとの逆行では切られないので勝率は上がりますが、1回の損失が大きくなってリスクリワードは悪化します。
だから、現実的には「勝率もリスクリワードも最高」を狙うのではなく、どちらかを固定して、もう一方を管理するという考え方になります。次で、僕がどうしているかをお話しします。
僕は「勝率5割」を固定して、リスクリワードを追っている
僕のやり方は、勝率は5割前後で固定して、リスクリワードだけを上げにいくというものです。
理由は、勝率をコントロールしようとすると、たいてい悪い方向に働くからです。「もっと勝率を上げたい」と思うと、無意識に利確が早くなります。利益が乗った瞬間に「消えたらもったいない」と決済してしまう。勝ちトレードの数は増えますが、1回の利益が小さくなって、リスクリワードがどんどん下がっていきます。これが、昔の僕が勝率7割でも負けていた原因でした。
今は、こう決めています。
- 勝率は5割前後で十分と考える。「2回に1回は負けて当たり前」と受け入れる
- そのかわり、エントリー前に「取れて何pips・負けて何pips」を必ず口に出す。リスクリワードが1.5を下回るなら、そのトレードは見送る
- 利確は、決めた場所まで基本的に動かさない。「早めに利確したい」という気持ちが出たら、それは勝率を上げてリスクリワードを下げようとしているサインだと考える
勝率5割・リスクリワード1対1.5なら、損益分岐の勝率は40%。5割あれば、そこそこの余裕をもってプラスです。勝率を無理に上げにいかないぶん、利確をがまんできるようになりました。
「コツコツドカン」は勝率を上げてリスクリワードを捨てた状態
勝率とリスクリワードのバランスがいちばん崩れているのが、いわゆる「コツコツドカン」です。
小さい利益をコツコツ積んで勝率は高い。でも、たまに損切りできずに大きく負けて、それまでの利益を一気に失う。これは、勝率を上げるためにリスクリワードを極端に犠牲にした結果です。勝ち=小さい、負け=ときどき巨大、という状態なので、期待値はマイナスになりやすい。
直し方はシンプルで、「勝率を守るために損切りをずらす」のをやめることです。損切りを決めた場所で必ず切る。そのかわり、利確も決めた場所まで引っぱる。勝率は少し下がりますが、リスクリワードが安定して、トータルがプラスに変わります。損切り貧乏から抜け出す5つのステップと、FXで9割の人が勝てない理由もあわせて読んでみてください。
自分の勝率とリスクリワードを、記録から出してみる

ここまでの話は、自分の数字を出してみないとピンと来ません。やることは3つだけです。
- 直近30〜50トレードの記録を用意する(デモでもOK)
- 勝率を出す(勝ちトレード数 ÷ 全トレード数)
- 平均利益と平均損失を出して、割り算する(平均利益 ÷ 平均損失 = リスクリワード)
この3つが出たら、さっきの式に当てはめます。期待値がプラスなら、そのやり方を続けて量を増やしていい。マイナスなら、「勝率が足りない」のか「リスクリワードが悪い」のかを切り分けます。
たいていの負けているトレーダーは、勝率は悪くありません。悪いのはリスクリワードのほうです。平均損失が平均利益より大きくなっている。その場合、新しい手法を探すより、「利確をもう少し引っぱる」「損切りを決めた場所で切る」の2つを直すほうが早いです。
30トレードの記録で計算してみる
イメージがわきにくいと思うので、実際の数字で1回やってみます。直近30トレードが、勝ち18回・負け12回だったとします。
- 勝率 = 18 ÷ 30 = 60%
- 勝ち18回の利益合計が18万円 → 平均利益 = 1万円
- 負け12回の損失合計が24万円 → 平均損失 = 2万円
- リスクリワード = 1万円 ÷ 2万円 = 0.5(1対0.5)
期待値を出すと、0.6 × 1万円 - 0.4 × 2万円 = +0.6万円 - 0.8万円 = 1回あたり-0.2万円。勝率60%なのに、30トレードで6万円のマイナスです。
この人がやるべきは、勝率を70%に上げることではありません。平均損失を平均利益より小さくすることです。損切りを決めた場所で切って平均損失を1万円に、利確を少し引っぱって平均利益を1.2万円にできれば、リスクリワードは1.2。期待値は 0.6 × 1.2万円 - 0.4 × 1万円 = +0.32万円で、同じ勝率のままプラスに変わります。
「勝率は足りている。直すのはリスクリワード」。負けている人のほとんどが、このパターンです。
Mr.Kが「期待値」について話した動画
下の動画は、リアルトレードをしながら「利益が2〜3しかないのに損切りが10あったら、3回勝っても1回の負けでチャラになる」という話をしている回です。勝率とリスクリワードのバランスを、実際のチャートで見られます。
よくある質問
勝率とリスクリワード、初心者はどちらを先に意識すべきですか?
リスクリワードが先です。勝率を上げるにはエントリーの精度や環境認識など、身につくまで時間のかかる要素が絡みます。一方リスクリワードは「損切りを決めた場所で切る」「利確を引っぱる」だけで、今日から改善できます。まずリスクリワードを1対1.5以上に固定して、勝率はあとから育てるイメージです。
勝率5割・リスクリワード1対1.5だと、連敗が怖いのですが?
連敗は必ず来ます。だからこそ、1回のリスクを資金の1〜2%に抑えておくことが前提です。1トレードの損失は資金の何%かと破産確率の考え方もあわせて読むと、連敗しても口座が耐えられる形がつくれます。
スキャルピングは勝率重視でいいと聞きました。本当ですか?
スキャルピングはリスクリワードが1対1前後になりやすいので、そのぶん勝率が必要になります(損益分岐が50%前後)。ただ「勝率重視でいい」というより、「リスクリワードが取りにくいぶん、勝率で補わないと成立しない」という意味です。バランスで見る考え方は同じです。
リスクリワードを気にすると、利確できずに利益が消えてしまいます
「決めた利確ラインまで来たら決済、来なければ損切りライン」とルールを固定してください。途中で「もう決済したい」と思っても動かさない。最初はもどかしいですが、これをやらないとリスクリワードはずっと下がり続けます。分割決済(半分利確・半分は伸ばす)から慣れるのもおすすめです。
勝率もリスクリワードも良い手法は存在しないのですか?
まれにありますが、たいていはエントリーを極端に絞った結果で、トレード回数がとても少なくなります。回数が少ないと検証に時間がかかり、精神的にも待つのがつらい。現実的には「勝率5割・リスクリワード1対1.5〜2」くらいを、そこそこの回数でこなせる形が続けやすいです。
まとめ
- 勝率とリスクリワードは、期待値(勝率×平均利益 − 負け率×平均損失)でひとつになる
- 勝率が高くても、リスクリワードが悪ければトータルはマイナスになる
- 損益分岐の勝率=1÷(1+リスクリワード)。1対2なら勝率33%で足りる
- 勝率とリスクリワードはトレードオフ。どちらかを固定して、もう一方を管理する
- 僕は勝率5割で固定して、リスクリワードを1対1.5以上に保つことだけを見ている
- 負けている人は勝率より「平均損失>平均利益」を直すほうが早い
まずは直近30トレードの記録から、自分の勝率と平均利益・平均損失を出してみてください。「勝率は悪くないのに負けている」なら、直すのはリスクリワードのほうです。
この記事は、FXの資金管理のやり方(全体像)の一部です。資金管理を最初から順番に読むなら、まずそちらをどうぞ。FX初心者ロードマップの「資金管理」パートにあたる内容です。あわせてリスクリワード比の考え方、破産確率の考え方もどうぞ。
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